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長崎地方裁判所厳原支部 昭和40年(わ)43号 判決 1965年12月21日

被告人 野山秉春こと宋秉春 外一名

主文

被告人宋秉春同呉文日を各懲役四月に夫々処する。

被告人両名に対し未決勾留日数中各三十日を夫々右本刑に算入する。

押収に係る貨物中後記目録記載の貨物は被告人両名から夫々没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人宋秉春は韓国貿易船雲海号の事務長代理、同呉文日は機関長として同船に乗組み昭和四十年九月二十五日韓国済州港を出港し岡山県宇部でアワビ、サザエを降し大阪に立寄り下船中、被告人等は協議し税関の許可を受けないで別紙目録記載の衣類、薬品、化粧品等を夫々韓国に密輸出する目的を以て同年十月二十一日頃大阪市生野区猪飼野西三丁目宋永淑に依頼し右貨物を一旦長崎県上県郡上対馬町大字古里、金春河方に発送し到着させおき右貿易船に乗組み韓国に帰る途中比田勝港に立寄り古里に繋留中同年十月三十日頃税関の検査および輸出の許可を受けないで、右別紙目録記載の衣類、薬品、化粧品等を夫々韓国に密輸出する目的を以て長崎県上対馬町大字古里五百四番地海岸に停泊中であり韓国に向け出発する韓国貿易船雲海号に積載しもつて右貨物を輸出したものである。

(累犯の原因となる前科および刑の執行状況)

被告人宋秉春は

第一昭和三四年一月二三日福岡地方裁判所小倉支部で出入国管理令違反、関税法違反罪で懲役八月に処せられ同年三月五日確定同日執行始期同年九月二十三日執行終了(引続き第二刑執行)。

第二昭和三十一年七月九日東京高等裁判所で覚せい剤取締法違反罪で懲役一年六月に処せられ昭和三十四年二月二十四日確定同年九月二十四日執行始期、昭和三十五年八月二十日執行終了(引続き第三刑執行)。

第三昭和三十四年六月十八日大阪地方裁判所で覚せい剤取締法違反、タバコ専売法違反罪で懲役四月に処せられ同年七月三日確定昭和三十五年八月二十一日執行始期同年十二月二十日執行終了。

被告人呉文日は

第一昭和三十五年十二月二十五日神戸地方裁判所で出入国管理令違反、外国人登録法違反罪で懲役三月に処せられ昭和三十六年一月五日確定同年三月十四日執行終了。

第二昭和三十七年六月二十九日長崎地方裁判所佐世保支部で出入国管理令違反罪で懲役一年六月に処せられ同年七月五日確定昭和三十八年十一月二十九日仮出獄同年十二月二十九日刑終了。

したものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

法律に照らすに、被告人両名の判示所為は夫々関税法第六十七条、第百十一条第一項、罰金等臨時措置法第二条に該当し各懲役刑を選択し被告人宋秉春には前示前科があるから刑法第五十六条第一項、第五十七条(引き続いて執行した場合であるから第五十九条は適用しない)を適用し、被告人呉文日にも前示前科があるから刑法第五十六条第一項、第五十九条、第五十七条を適用し夫々累犯加重をなしたる刑期範囲内において、被告人両名を各懲役四月に処し、同法第二十一条を適用し未決勾留日数中三十日を右本刑に夫々算入し、押収に係る主文掲記の貨物は本件犯罪にかかる貨物であり犯人以外の者に属せざるを以て関税法第百十八条第一項本文に則り之を夫々被告人から没収すべきものとする。

(判示)韓国貿易船の船員でも携帯品として税関の許可を得られそうもない多量の物資を税関の検査および輸出の許可を受けないで該貿易船で密輸出する目的で以て大阪で多量の衣類、薬品、化粧品を集め大阪から一応対馬に別途送りしおき自ら右貿易船に乗込み出発し対馬に立ち寄つてひそかに正に韓国に向い出発せんとする右貿易船に右物資の積み込みを完了すれば船が領海を出ると否とを問はず直ちに既遂となるものと解するを相当とする。よつて右法令を適用した。

(裁判官 井上享)

別紙目録<省略>

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